
石巻のレストラン
Restaurant in Ishinomaki
震災復興 | 飲食店
震災から八年、次のステージへ -建築をつくることは未来をつくること-
建主の夢
東日本大震災後、石巻で生まれ育った建主は地元NPOの活動などを通じて石巻の復興活動に尽力されていた。以前からの夢だった自分のお店をつくりたいと相談があったのは、復興活動が落ち着いてきた2017年のことだった。 津波による被害が大きかった石巻では、被災と一言で言っても沿岸部から内陸部までその状況はさまざまであることを現地へ行って痛感した。被災による市内移住で人口の移動も多い。このレストランはそのような人口流入が進むエリアに建っている。そのような場所で、さまざまな人が集えるスパイスカレーのレストランをつくるというのが、建主の要望であり、希望だった。
石巻の声
設計の打合せでは震災や復興を直接意識することはなかったが、建主の声の中にはいつも石巻の声があった。完成まで石巻には2年間通うことになったが、打合せの後には毎回市内のいろいろなところを案内して頂いた。建主が顔が広いこともあり、地元のいろいろな方の声を直接聞くこともできた。 お店オープン後、建主と共に走り続けてつくった建物をあらためて眺めてみると、明るく朗らかで、時折見せる芯の強さと多くの心強い友人を持つ、女性建主の人柄がそのまま建物に映り込んだように感じられた。設計中そのような意図を持ったことはなかったが、結果として打合せ以外も含めたプロセスがそうさせたように思う。実際、お店の客層は老若男女さまざまで、地元の本当に幅広い層に受け入れられている。
脱 "復興"
計画中、市内に住むある女性から「今の目標は『脱 "復興"』なんです!」という言葉を聞いた。建主もその言葉を聞いて頷いていた。過去に引きずられるばかりでは生きていけない。自分たちで次の「未来」を描かなければならない。この建物がその「未来」の支えになってくれたら設計者として本望である。






















建築場所 | 宮城県石巻市
用 途 | 飲食店
工事種別 | 新築工事
構 造 | 木造平屋建て
構造設計 | 関西木材工業 植森貞友
施 工 | ヒノケン 日野正敦、日野裕貴
撮 影 | 髙橋菜生