
スリランカ旧紅茶農園の長屋
Line house in the former tea plantation area of Sri Lanka
地域再生 | 国際協力 | 宿泊研修施設
労働者長屋という建築にできること
建築を通じた支援
「セイロンティー」でその名を知られるスリランカ。一時期まで輸出量世界一位を占めていたその紅茶産業はどのような人に支えられているかご存知だろうか。紅茶農園で労働者として働いているのは、スリランカ人ではなく、スリランカに紅茶を持ち込んだイギリス人でもなく、インド南部から移り住んできたタミル人なのである。現地で活動するNGOと共に進めているこのプロジェクトは、約30年前に村の紅茶農園が閉鎖されて以降孤立しているタミル人が住むある村への、建築を通じた支援を目的としている。プロジェクトでは、紅茶農園の開発に由来する村の歴史・文化・自然、および長屋等の建築群を見所とした地域ツーリズムの展開を計画し、その拠点として約1/3が滅失していたある一軒の長屋を再生した。
特徴的な要素の再構成
この村の長屋群の特筆すべき点は、紅茶農園に関係するイギリス、スリランカ、インドの 3国に由来する特徴がかたちとして表れているところである。具体的には、130年前にイギリスで製造されこの地に持ち込まれたスチールフレーム、地場産の花崗岩で積まれた厚さ40cmの壁とスリランカの住居によく見られるヴェランダ空間、ヒンドゥー教の儀式と密接な関係を持つ牛糞塗りの床である。再生計画案は、村の歴史とタミル人の生活が映し出された長屋の構成を、訪れた人へより伝えやすくすることを目的に、「復元」と「特徴的な要素の再構成」という2つのアプローチから立案した。
「負の遺産」が引き出す村の新たな未来
現地スリランカでは「負の遺産」としての捉え方も根強い旧紅茶農園の長屋であるが、村の歴史やタミルの人々の生活文化を様々な視点から評価し直すことができれば、それは村の新たな未来を描く力になると考えている。今回再生された長屋がそのきっかけとなり、未来に向けて新たな歴史がつくられる場所となることを信じている。















建築場所 :スリランカ中央州キャンディ県デルトタ郡バウラーナ村
用 途 :Community & Cultural Learning Center
工事種別 :再生・改修工事
構 造 :組積造 + 鉄骨造 平屋
事業主体 :NGO APCAS
コーディネーター :前田昌弘(京都大学)
設備マネジメント :平石年弘(国立明石高専)
撮 影 :大庭徹建築計画